電子麻雀牌システム「Retile」 について — 会場でいただいたご質問へのお答えとともに
初めまして。株式会社遊研堂の森田と申します。
7月19日に開催された「オールジャパン麻雀チャンピオンシップ2026」にて、弊社が開発した電子麻雀牌システム「Retile」を用いたデュプリケート麻雀の試遊会が開催されました。
会場や弊社ホームページにはシステムについての解説も載せていましたが、改めて基本的なシステムの構造と会場で多くいただいた質問への解答、今後の展望をご説明させていただければと思います。

デュプリケート麻雀とは何か
まず前提となる「デュプリケート麻雀」について、簡単にご説明します。
麻雀の勝ち負けには、配牌やツモという「運」と、打ち手の「実力」が混ざっています。それなら、複数の卓にまったく同じ配牌・同じ山を用意して同時に打てばどうなるでしょうか。
運の条件が揃うので、同じ席に座った人どうしの結果の差は、そのまま判断の差として比べられるようになります。これがデュプリケート麻雀です。
競うのは同卓の相手ではなく、別の卓で同じ席・同じ牌を引いた誰か、という点が面白いところです。
この方式は清藤健郎氏が考案されたもので、これまでは同じ山を人の手で積んで実現されてきました。
デュプリケート麻雀そのものの詳しい解説は、近日公開予定の別記事に譲ります。
Retileとは何か
今回のイベントで使用された電子牌システム「Retile(リタイル)」は、このデュプリケート麻雀の「同じ山を用意する」という一番大変な部分を、まるごと自動化するために弊社が開発したシステムです。名前は「re(もう一度)+ tile(牌)」、つまり「牌を敷き直す」という意味を込めています。
種を明かすと、Retileの牌は一枚一枚が小さな液晶画面を持った電子機器です。
牌の絵柄は印刷ではなく画面に表示されていて、外からの合図で30秒ほどのうちに別の絵柄へ切り替わります。
山を並べ替えるのではなく、並んだ牌の「中身」のほうを書き換える。これがRetileの中心的な要素です。
私たちはこれを「ネット麻雀でしかできなかったことを、現実の卓に持ってくる」試みだと考えています。全卓同じ配牌も、その先の様々な遊び方も、オンラインなら簡単です。それを現実世界の体型として実現させるのがRetileです。
なお、Retileはデュプリケート麻雀の実現のために開発されたシステムではありますが、通常のリーチ麻雀や他の特殊麻雀など、さまざまな用途に使用可能です。今後の展望などについては後述いたします。
大まかな仕組みについて
1回の局が始まるまでに、裏側では次の5つのことが起きています。

1. 牌は全部「画面つき」です
牌の側面には、一枚一枚を見分けるための小さなQRコードが付いています。これは牌の絵柄とは無関係で、いわば背番号のようなものです。
2. カメラが山を撮影します
卓の側面に取り付けたカメラが積み上がった山を真横から撮り、QRコードを読み取って「どの牌がどの位置にいるか」を確認します。
「いまの並び」と「これから配りたい配牌」を突き合わせて、牌一枚一枚への指示(あなたは次、
4. Bluetoothで一斉に知らせます
指示は卓の照明ユニットに内蔵したアンテナから、Bluetoothの「放送」として全牌へ一斉に届けます。
数十秒で卓上の136枚すべてに行き渡ります。
5. 牌が自分で書き換わります
指示を受け取った牌は、自分の画面を書き換えます。
あわせて牌は「いま自分は何の絵柄か・電池は元気か」を常に発信していて、運営のパソコンで全牌の様子を見守れるようになっています。
機材間のつながりを1枚にまとめた構成図は下記の通りです。技術に興味のある方はご覧になってください。

会場でいただいたご質問
試遊会では、たくさんのご質問をいただきました。多かったものをご紹介します。
Q. 不正やイカサマはできないの?
気になりますよね。
「不正」にもいろいろあるので、分けてお答えします。
「側面のQRコードを読めば、ガン牌(牌の見分け)ができるのでは?」
— できません。側面のQRコードは牌の背番号に過ぎず、どの背番号の牌がどの絵柄になるかは毎局変わります。
仮にQRコードを目で覚えられたとしても、その牌が次に何の牌になるかは誰にも分からないのです。
「電波で不正に書き換えられない?」
— 技術的に妨害を試みることは不可能ではありませんが、システムが全牌の表示状態を常に見張っています。「指示した絵柄」と「実際の表示」が食い違えばすぐに検知できる作りになっています。
「牌のすり替えは?」
— デュプリケート麻雀では、かえってバレやすくなります。全卓の山が一致しているはずなので、他の卓と食い違いが出た時点で不正の可能性が浮かび上がるからです。
「積み込みは?」
— 意味がありません。Retileでは山を積んだ「後」に絵柄を書き換えるため、積む段階でどんな細工をしても、その後の書き換えでリセットされてしまうのです。
Q. 電池はどれくらい持つの?
いまのところ約7時間です。半日の大会であれば問題なく走り切れます。実際、オールジャパンでは朝8時から16時まで、途中30分ほどの充電休憩を挟んで運用しました。
Q. 普通の牌と打感は違う?
正直に言うと、違います。
牌は一般的なものより一回り大きく(約3×4cm)、中身は精密機器なので、いまのところ強い打牌には耐えられません。耐久性は今後の課題です(そして、そもそもあまり強打はしないでいただけると助かります)。
Q. ネット麻雀でよくない?
先ほど書いたとおり、「ネット麻雀でしかできないことを現実に持ってくる」こと自体がRetileの大きな目的の一つです。
実物の牌を握って、同卓の人の表情が見えて、対局が終わったらそのまま卓を囲んで検討が始まる。
特にデュプリケート麻雀では対局後の検討会がとても大事な要素なので、この「そのまま話せる」空気はリアルならではの価値だと考えています。
Q. 鳴きが入るとツモがずれて、比較にならないのでは?
デュプリケート麻雀への昔からの指摘ですが、今大会のルールでは各プレイヤーが自分専用の山からツモる方式を採っているため、誰かの鳴きで自分のツモが変わることはありません。ルールの詳細は別記事でご紹介します。
Q. 買える?いくら?
現時点では販売の予定はありません。量産の体制が整っていないことに加え、機材がまだデリケートで、開発者のメンテナンスなしで使っていただける段階ではないためです。
当面は試遊会や大会で体験していただく形になるかと思いますが、早い段階で多くの方に遊んでいただけるよう、取り組んでまいります。
今後の展望
デュプリケート麻雀において
今回は試遊会ということで1局ごとのプレイとなっていましたが、すでに実際の半荘でのプレイも可能な段階です。
まずは小規模な大会やリーグ戦からスタートし、その次のステップとしては4卓での大会実施、将来的には10卓以上に増やし、大規模な大会が開催できればと考えております。
牌譜の自動記録へ
会場でも多く寄せられた要望でした。リアル麻雀で牌譜を書き起こすことは大変ですよね。
現時点ではRetileは牌譜の自動記録には対応していません。
ただし、Retileには卓にも牌にも、たくさんのセンサーがあります。
これを使って、誰がいつツモり、何を切ったかを牌自身が申告する——つまり対局の記録(牌譜)が自動で残る仕組みを実験しています。
デュプリケート麻雀は「あとで比べて検討する」ことに価値がある競技なので、記録係なしで全卓の牌譜が揃えば、大会運営も感想戦も大きく変わるはずです。
競技・研究・教育面での展望
同じ配牌を何度でも正確に再現できるということは、大会以外にも使い道があります。
教室や検定での「全員に同じ問題(配牌)を一斉に出す」演習、過去の名局を実物の卓の上で再現して研究する楽しみ方、そして詰め麻雀の配布。
中でも名局の再現は、デュプリケート麻雀が最初から目指してきたことの一つでもあります。
デュプリケート麻雀の外へ
牌の絵柄が自由に変わるということは、麻雀の遊び方そのものを広げられるということでもあります。
特定の牌だけ絵柄を差し替えるコラボ牌はすぐにでも作れますし、リーチやツモの瞬間に牌が演出で応える、といった拡張も一部は視野に入っています。
山の一部だけ情報を公開する特殊ルール(鷲巣麻雀のような形式)も、運営画面と組み合わせれば再現できます。
そして少し先の話をすると、「麻雀は結局、運のゲームでしょう」というご意見は、そのとおりだと思います。
ただRetileなら、すべての牌の情報を全員に公開した「完全に運のない麻雀」を作ることも、原理的には可能です。それがどんな競技になるのか、正直まだ私たちにも分かりません。分からないからこそ、試してみたいと思っています。
改めて試遊会にお越しくださった皆さま、ありがとうございました。Retileの最新情報は弊社ホームページおよび、麻雀界webで随時お知らせしていきます。