麻雀を入り口に、世代を超えたつながりを ~北九州市で「支エール麻雀ひろば」が開催中
「支援のその先」にある、地域とのつながり
福岡県北九州市で、健康麻雀を通じて若者と地域住民をつなぐ新たな取り組みが始まっている。“NPO法人支エール”が実施する「支エール麻雀ひろば」は、児童養護施設や里親家庭、自立援助ホームなどを巣立った若者をはじめ、地域との接点を必要とする若者と、地域住民が世代を超えて交流する場だ。北九州市の後援を受け、毎週土曜日に開催されている。

この取り組みの背景には、社会的養護を経験した若者が抱える支援のその後という課題がある。
近年は、18歳で施設を退所した後も、20歳、進学した場合には22歳頃まで支援につながる制度が整えられるなど、退所後の支援体制は広がっている。
一方で、進学や就職、住まい、お金、人間関係など、社会に出たばかりの若者が直面する問題は多く、制度があっても「困ったときに相談できる人がいない」「地域とのつながりがない」といった孤立の問題は残されている。
自身の経験から生まれた「居場所」
この「支エール」を設立したのは、自身も社会的養護のもとで育った経験を持つという理事長の田中義人さん。本人も退所後、20歳から27歳までひきこもりや無職の状態を経験したという。
その転機となったのが、若者支援プログラムを通じて参加した高齢者向けの健康麻雀教室だった。麻雀をきっかけに地域の人たちとの交流が生まれ、食事や外出など、卓を囲むこと以外の時間にもつながりが広がっていった。
その経験から、「人を変えたのは麻雀そのものではなく、人と人とのつながりだった」と実感。支援機関の中だけではなく、支援が終わった後も地域とつながり続けられる場所をつくろうと考え2026年4月に設立。現在の活動につながっている。
麻雀を「社会との接点」に
「支エール麻雀ひろば」は、単に若者向けの麻雀教室を開催するものではない。1卓に若者1人が入る形を基本とし、地域の高齢者や社会人と同じ卓を囲みながら、自然な会話や交流が生まれる環境を設計している。
定員は2卓8名で、1卓につき1人分、計2人分の「若者枠」を設けることで高齢者や社会人と若者が自然と同卓するようにし、無理なく多世代交流が生まれる仕組みだ。

麻雀という全世代が共通のルールで遊べるゲームを介することで、年齢や立場が異なる人同士でも会話のきっかけをつくりやすい。若者にとってはコミュニケーションや人間関係を実践的に学ぶ機会となる一方、高齢者をはじめとする地域住民にとっても、若い世代と接する機会になる。
そこで生まれた「また一緒にお茶を飲もう」「地域のお祭りに来てみない」といった何気ない関係こそが、この取り組みの目指すところだ。

「支えられる側」から「支える側」へ
支エールでは、この支エール麻雀ひろばを入口としながら、若者の生活や就労、住まいまで含めた伴走支援にも取り組んでいる。団体名の「支エール」には、「支える」と「YELL(応援)」を組み合わせ、「支えられる側から支える側へ」という思いが込められている。
麻雀を通じて生まれる交流を一過性のイベントで終わらせず、地域の中で継続する人間関係へとつなげていく。健康麻雀が持つ「誰でも同じ卓を囲める」という特性を、地域福祉と若者支援の新たな接点として活用する「支エール麻雀ひろば」。北九州市から始まったこの試みは、麻雀が地域の居場所となる可能性を改めて示している。

NPO法人支エール 概要


*所在地:福岡県北九州市
*代表者:田中 義人(理事長)
*理念:「支えられる側から、支える側へ。」
*活動目的:社会的養護経験者をはじめ、生きづらさや孤立を抱える若者が、地域とのつながりを通じて安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
